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艦これ小説『鎮守府室長執務記録』 [1 初期艦]

※この話はフィクションです。登場する人物・団体・組織名等は架空のものです。
また、この話は公式設定ではありません。あくまで著者である私・マロンが考えた設定です。

鎮守府前というバス停で下車すると、目の前に何やら立派な建物が見えた。入口の柱に「鎮守府」と書かれている。一応門はあるものの、特に警備員がいるというわけではないようだ。

正面に煉瓦造りの大きな建物が見えた。どうも築40年以上は経過しているだろうと思われる佇まいである。その建物の入り口の所にセーラー服を着た一人の少女が立っていて、自分に手を振っているようだ。私は彼女の方に近づいていく。
「あなたが司令官さんですか? 私は吹雪です、よろしくおねがいします!」
彼女は元気よく答えてくれた。…そういえば秘書艦とやらは吹雪と言ったっけか。
「その通りだ。本日こちらの鎮守府に着任した。一応君の上司ということになる。これからよろしくお願いする」
「精一杯頑張りますね!」
彼女は元気よく答えてくれた。第一印象であるが彼女とはいい関係を築けそうな気がした。

「さっそくで申し訳ないが、執務室に案内してもらえるかね」
「わかりました! ついでなので執務室以外の部屋も案内しますね」
これは非常にありがたい。気が効く子のようだ。

建物の中に入ると玄関には下足箱が設置されていた。やはり土足厳禁なのだろう。適当な靴入れに靴を入れて付属のスリッパに履き替える。

玄関の隣には「食堂」と書かれている。扉を開けると軽く100人近くが一緒に食べることができる広さだ。
「間宮さんの作るご飯、すごく美味しいんですよ! ご飯以外にもアイスが出てきたりするんです」
吹雪が嬉しそうに答えてくれた。
「間宮さんというのは女の人なのかね? こんな大人数をカバーするのは一人では辛かろう」
「ごめんなさい、ここでは料理人さんのことを間宮さんって呼んでるんです。何人働いているかは分かりませんが一人じゃないです。もちろん女性料理人も働いていますよ」
なるほど、相撲の木村庄之助みたいなものなのだろうか。

食堂見学はそこそこに切り上げ、階段で二階に上がった。そこにはずらりと部屋が並んでいた。
「基本的に同型艦の子二人で一部屋になるみたいです。でも要望があれば壁を取り払い4人部屋にすることもできるみたいです」と吹雪が答えてくれる。
更に階段を上がり三階へ上がる。三階の部屋は若干二階よりも広いようだ。
「重巡の子たちの部屋ですね」

さらに階段を上がり空母や戦艦の部屋のあるらしい四階の奥を進んでいくと、つきあたりに「執務室」と書かれている。
「司令官の部屋はここですね」
そう言うと吹雪がドアを開けてくれた。私は目を疑った。部屋に置いてあるのは、身の回りものを詰めて自分が送った段ボール箱が数箱だけだった。海が見渡せる窓には赤いカーテンがある、ただそれだけで箪笥はもとより執務机すら置いていないという余りにも殺風景な部屋だった。
脇にはドアがあり、そこから隣の寝室に行き来することができるようだ。こちらは一応ビジネスホテルのシングル程度の設備は整っているようだ。

「しまったな、ニ●リで机を買っておけばよかった。まさか執務机も置いてなかったとは…」
「とりあえず隣の寝室にサイドボードがあるので、それを使うしかないですね…」
「まったくだ」
私と吹雪がそろって溜息をついた。これからの生活が不安で仕方がない。

数十分後、食堂から椅子を借り私と吹雪で対していた。
「さて、先ほども言ったが、本日こちらの鎮守府に着任した。まずはよろしく。早速だが君の名前を聞きたいと思うのだがどうか」
「私は特型駆逐艦一番艦の吹雪です」
自己紹介を続けようとする吹雪をさえぎる。
「いや、そうじゃない。君が大日本帝国海軍の艦艇・吹雪の艦娘というのは知っている。そうじゃなくて君の本名を知りたいのだよ」
そう尋ねると吹雪は黙ってしまった。私は困惑した。こういうのは初めてでどうすればいいのか分からない。もしかして地雷を踏んでしまったのだろうか。
「…ごめんなさい」
「ん?」
「…ですから、ごめんなさい…」
吹雪の目から涙が流れている。
「すまない。怒らないから顔を上げて詳しく話してくれないか」

数分後吹雪が泣きやみ、事の詳細を話してくれた。
艦娘に選ばれると鎮守府の隣にある艦娘の養成所に入る。そこで艦艇の力を取り込むために様々な訓練を行うこととなる。艦娘は純粋な艦艇としての能力のみを持つため雑念をすべて取り払う必要がある。
そこで、艦艇としてのデータ以外を思い出さないよう努めなければならない。養成所に入るまで住んでいた住所はもとより、両親や家族、友達との思い出、更には自分の名前すら思い出してはいけないのだという。そもそも養成所では艦艇の名前でしか呼ばれなかったという。また、養成所では制服が支給されるため今まで着ていた衣服も着ることができなかったようだ。
養成所に入ると外部との交流も絶たれ、外部の記憶がなくなってしまう。
そのため、吹雪が覚えている記憶というのは特型(吹雪型)駆逐艦一番艦、艦艇の経歴、装備程度らしい。
「一応、テレビやコンビニはあるので番組の内容や食べ物くらいの情報は知っていますけど、自分たちの身の回りのことについての内容は忘れなさい、と言われてました」
これでは囚人と変わらない気もする。そう吹雪に聞いてみると、
「それは仕方がないです。私たちは艦娘に選ばれたんですから。刑務所は罪を懺悔する場所ですけど、養成所は罪のない人たちを助けるために学ぶ場なんです、覚悟の上で入りましたから後悔はありません。それに、先生も友達もみんなやさしい子ばかりでしたし」
と、健気に話してくれた。こちらが涙が出そうになった。

「先ほどは君のことを知らずに変な質問をしてしまい申し訳ない。これからよろしく頼む」
「いえ大丈夫です。私こそ取り乱してしまってごめんなさい」
とりあえず吹雪と握手を交わした。
「…ところで隣の部屋にはベッドが1つしかなかったが、君はいつもどこで寝ていたのかね?」
「あの、実は私も今日の朝養成所を出たばかりなんです。だからもう養成所で寝るわけにはいかないですよね」
「じゃあ私と一緒に寝るかね? 大丈夫大丈夫イタズラしないから」
「し、司令官…!? さ、さすがに一緒というわけには、い、いきませんもんね… 多分隣に部屋がありますって!」
そう話すと顔を赤らめた吹雪が部屋を飛び出して行った。
暫くすると吹雪が「ほら、やっぱり執務室の隣に秘書官室がありますよ!」と言いながら戻ってきた。
「ちゃんと中から鍵がかけられるようになってるみたいです」とは吹雪の弁。

外を見ると陽が傾いてきたのが分かった。
「もうこんな時間か。今日はもう遅いから明日から活動することにしようか」
「そうですね。あ、そういえば今日の夕食は肉じゃがらしいです。ここの肉じゃが美味しいんですよ」
「そうか、なら食堂に行こうか。とりあえずこの椅子はここに置いとくとしよう。執務室に何もないから置いておいてもいいかと言えば許してくれるだろう」
「そうですね」

そう言うと二人は食堂に降りて行った。
「司令官は嫌いな食べ物ってあります?」
「俺は提督だぜ、嫌いな食べ物があったらこの仕事やっていけないよ」
「あ、明日はピーマンの肉詰めらしいですよ。楽しみですね」
「ええ~~~っ、じゃあ出前取る!」
「やっぱ嫌いな食べ物あるんじゃないですかぁ!」

こうして着任1日目は終了した。
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プロフィール

マロン

Author:マロン
鉄道マニアで主に乗り鉄。
また、艦これやガルパンが好きです。

「マロンブックス」というサークル名でたまにイベントに参加しています。

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