FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

艦これ小説『鎮守府室長執務記録』[番外編 終戦後艦娘]

昨日の夜に突如として現れたハッシュタグ「#終戦後艦娘」。
少し駄文を書き散らしましたが、加筆修正をしてここに公開します


深海棲艦との戦いが終わり「鎮守府」は解体された。任務を解かれた艦娘はそれぞれ元いた場所へと戻っていった。私は復興省に配属され戦後処理を行うことになった。

数ヶ月後、私が住む官舎に一人の少女が訪ねてきた。ボロボロの制服姿で、顔は煤にまみれたように汚れていた。初めは物乞いかと思ったが、私はその顔に見覚えがあった。
「……吹雪、なのか……?」
私がそう尋ねると、少女はこっくりと頷いた。私は正式に籍を入れた飛龍に濡らしたタオルを持ってきてもらうと、吹雪にそれで顔を拭くように伝えた。
「どうしてこんな恰好をしているのかね」
そう吹雪に訊くと吹雪は涙ながらに語り始めた。

相次ぐ深海棲艦との戦いにより国土は荒廃、戦前のような活気は失われていた。何より娘を「艦娘」として徴用された事に対しても元艦娘の親は強い憤りを感じていた。
戦時中は「国の存亡のため仕方ない」と言われてはいたが、やはり娘が引き離されるという苦しみは持っていた。娘を「鎮守府」に取られ手元には毎月送られてくる幾許かのお金。いつ戻ってくるかもわからないという現実……。
そんなことが何年も続くと人間、どこかおかしくなるというものだ。また、帰ってきたところで殆どの娘が社会に溶け込めないというのが実情だった。

吹雪の場合は家に帰ったはいいが、既に吹雪の居場所はなかったのだ。鎮守府において義務教育程度の勉強はしていたが、それでは帰ったところで仕事を見つけることは出来なかった。
そんな吹雪に対し家族が穀潰しのような目で見られたことに耐えられなくなり、着の身着のままで家を飛び出してきたのだという。
最初は功労金で生計を立ててはいたが、3ヶ月もすると底を尽き食事も満足に取れないような生活にならざるを得なかった。

帰ってきてくれたことに対して手放しで喜び、アフターケアをしてくれる家庭もあることはあった。しかしそれはごく一部にとどまった。ある娘は国の復興のため、土木作業等で生計を立て、ある者は艦娘という肩書きを隠し料理店を開いた。弓道塾で生計を立てている者もいた。「那珂ちゃんこういう仕事しかできないしー」と言い夜の仕事をする艦娘もいたようだ。
親が亡くなった艦娘は孤児院に送られたり、「ウチの娘が艦娘だった」ということを知られたくない親は娘を家から出さず衰弱して入院を余儀なくされることもあった。中には普段の生活に耐えられなくなり自殺を企てた艦娘、さらには緊張の糸が切れ廃人同然となり精神病院で生活を送ることを余儀なくされた艦娘もいた。

吹雪からそんな話を聞かされた。どうやら全国を放浪しながら集めた情報らしく、吹雪は衰弱寸前だった。吹雪に「とりあえず泊まっていきなさい」と伝えた。
吹雪は頷き、「横になっていいですか」と言うと居間で横になり眠りだした。飛龍が吹雪に布団をかけてあげた。

「うふっ、やっぱかわいいですよね」
飛龍が私にそう聞いてくる。
「まぁな。初期艦だったからな。他の子よりも愛着があるというのは確かかもしれん」
「それでも私を選んでくれたんですね」
飛龍は茶化してくる。

吹雪の寝顔を見ていると、鎮守府にいた時の思い出がフラッシュバックしてきた。
沖ノ島海域全域で敵に砲撃を食らわせて勝利をもぎ取った榛名、キス島海域で涙目になりながら戦って勝利をもぎとった潮、北方海域全域であの戦争中唯一轟沈した北上の敵をとってくれた大井っち。初めての正規空母として威力を発揮した赤城、現在嫁となった飛龍との出会い、そして右も左も分からない時に支えてくれた初期艦の吹雪――。

鎮守府では笑顔が絶えず楽しんでいるように思えた。
しかし、皮肉なことに戦争が終わり平和な世界が訪れたらこの仕打ちだ。戦争が終わらない方が良かったのだろうか……。

艦娘たちの心に大きな傷を負わせておきながら、自分はのうのうと生きようとしている。そんなのあっていいはずが無い。そう思うと自然と涙が溢れた。
そう思い、飛龍に「行きたい場所がある。あとは頼んだ」と伝えた。飛龍はその言葉で私が何をするかが分かったようで、「私も行っちゃだめですか」と聞いてきた。
「それでは吹雪が取り残されてしまう。そうするとまたあの子を寂しがらせてしまう。君はあの子と一緒にいてほしい」
そう言うと、飛龍は「それでいいのなら……」と答えた。
「……それじゃ、行ってくる」

京浜電車の終点に到着しそこからバスに乗った。バスには自分一人だけが乗っている。鎮守府設立のため住民の生活拠点を移した影響なのだろうか、荒廃とした景色が続く。
「鎮守府前」で下車し少し歩く。かつて鎮守府があった場所だが、既に建物は取り壊されており、更地となっている。海に面した場所にあり波は穏やかで、時折波が打ち寄せている。まるでもう戦闘はないんだよと言わんばかりである。

私が海を見ていると、後ろから足音がする。吹雪が泣きながら私のもとにかけて来た。
「吹雪、寝てたはずじゃ」
「あの後、トイレがしたくて起きたんです。そしたら司令官の姿が見えなくなってたから、飛龍さんに聞いてみたんです。最初は答えてくれなかったんですけど、司令官が行くとしたらここなんじゃないかって。それで追いかけてきたんです」
「そうだったのか。ずっとあそこにいてもよかったんだぞ」
「だって私は艦娘ですよ。司令官の言うことは絶対ですもん」
「そうか、君はいつまでも『艦娘』なのだな」
そう言うと、私は自然と吹雪をギュッと抱いていた。
「し、司令官……!?」
「吹雪はいつもこうだったな。私が吹雪の体を触ると決まって驚いた顔をしてそんなことを言ってたっけ」

抱き終わると私は吹雪にこう伝えた
「さて、これが最後の命令だ。これで私の心臓を打ち抜いてくれ。君たち艦娘だけに辛い思いはさせたくない」
そう言うと吹雪にピストルを手渡した。
「あの……、本当にいいんでしょうか?」
吹雪は聞き返した。私の決意は変わらなかった。それを見て吹雪は決意したようだ。吹雪は泣きながらも、ピストルを私に向けて撃った。この戦争中に培った命中力で一発で心臓に命中、胸から血が流れ崖から落下した。
「嫌だ、嫌だよぅ……」
膝をつき泣き叫ぶ吹雪。ボロボロでまるで大破したかのような制服姿の少女は持っていたピストルを頭に向けて発砲、提督の後を追うようにして海へと落下していった。その顔はせめて「あの世界」では平和で過ごせるだろう、そんな顔だった――。
スポンサーサイト
プロフィール

マロン

Author:マロン
鉄道マニアで主に乗り鉄。
また、艦これやガルパンが好きです。

「マロンブックス」というサークル名でたまにイベントに参加しています。

最新記事
同人誌通信販売
こちらから(新しいウィンドウで開きます)
カレンダー
10 | 2018/11 | 12
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
アクセス
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。